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神山監督とタムラコータロー監督が好き。 I've Soundという音楽制作集団のぷち追っかけ。
■涼宮ハルヒの憂鬱/キョンとハルヒ
※アニメ版を参考に。

目覚めを望まぬ白雪姫


つまりあれは気の迷いだ。気の迷いでなければ、世界を救う為の尊い犠牲だ。あんなわけのわからん灰色の世界(古泉曰く、閉鎖空間とやら)でアダムとイヴなんぞを演じるつもりはこれっぽちもない。少なくとも俺にはない。ハルヒは…どうだか、分からんが。

いつもの部室、いつもの団長席で、涼宮 ハルヒは黙っていれば美しい顔をくしゃくしゃにして、ディスプレイを睨んでいる。どうせまた不思議事件の報告や謎の相談メールが一通も来ていないことにご立腹なのだろう。

「どういうことなの、何で未だに一通もないわけ?」

眉間に皺が寄りまくった鬼のような形相で、マウスをカチカチとクリックする音がループする。
長門は相変わらず無言のまま華麗にハルヒの文句をスルーし、ぺらりと細い指先でページを捲っている。
全くいつもと変わらん日常、これがどれだけ危うい均衡を保つ地面の上での出来事なのか、幸か不幸か俺は身をもって知ってしまったわけだ。誰も居ない、ハルヒと二人きりの世界は薄暗く、あの透明な光る巨人だけがぽこぽこと新世界に産声をもたらし、今まで得てきたものが途端にゼロになって失われてしまう場所。どんなに頼まれたって、そんな世界を望むことはできない。
ハルヒが望んでハルヒが創ってしまったあの世界は、俺が知る世界とはたぶん別物になってしまう。俺は今のこの世界がそれなりに好きだ。不条理と理不尽が世間を渦巻いていても、それでも悪くないと思える何かが俺の周りにはあるからだ。

「つまんないわ」

イラついた様子でマウスから手を離し、腕を組んで団長殿は吐き捨てる。
で、運悪くかタイミング良くか、頬杖を突いていた俺とばっちり目が合う。ああ、合っちまったよ。ポニーテールだし今日はまあ比較的いろいろ許せる気がするので、何なら相手になってやろう。
そんな心持ちでハルヒの目を見つめ返すと、何故かあいつは、ふいっと目を逸らしやがった。
いつもと微妙に違う反応だ。俺は首をかしげた。

「帰る」

ガタン、椅子を蹴倒すように立ち上がり、鞄を引っ掴んで、ハルヒはいつもより二倍ほど速いペースで部室を立ち去った。

「なんだ、ありゃ」

ぼやいてみても、勿論、答えはない。
しっくり来ないものを感じながら、俺は長門に声をかけ、下校の為に鞄を肩に提げた。

■END

キョンとハルヒ。原作で白雪姫後の二人とか、たぶん書かれてはいるんでしょうけど…。
甘ったるいものより、どシリアスでキョンハルとか読んでみたいです。
まだ、胸にある気持ちに自覚がないままの二人とか。

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