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神山監督とタムラコータロー監督が好き。 I've Soundという音楽制作集団のぷち追っかけ。
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■ONEPIECE/ルフィ×ナミ
ルフィとナミ。それから、サンジとウソップ。

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reason.


「ナミ」

 おれが呼んでも、全然反応しない。んー、とか言って、ひらひらと手を振っておれを追い払うんだ。あとちょっとー、って甘ったるい声で。せっかく起こしてやってるのに、起きる気配がねェんだ。早くしないと朝飯の時間になる。もうそろそろじゃないか?

「ナミさーん、起きてますか?」

 軽いノックの後にドアの向こうからサンジの声が聞こえた。
 おぉ、サンジ。メシか? そうして口を開くよりも早く、がばりと起き上がったナミがおれの口を塞いだ。もがもがしている間に、ナミは元気な声でサンジに返す。

「ええ、おはよう」
「もう朝食の用意できてるんで、冷めないうちにどうぞ召し上がってください。お待ちしています、レディ」
「ん、ありがとう、サンジくん。あとちょっとしたら行くわ」

 サンジの気配がなくなったところで、ナミはふうと息を吐く。

「ふぁんれ、ふぉんなふぉとふるんら(なんで、こんなことするんだ)」
「あんたがここに居るの知ったら、サンジくん怒りだしそうなんだもの」
「んん、ぷは。そうかァ?」
「そうよ」

 ナミはつんと澄ました顔のままおれから手を離して、気だるそうにベッドから足を下ろした。
 よく分からん。おれがここに居ると、サンジが怒る。なんでだ?

「さて、着替えないと。ほらルフィ、乙女の着替えよ。出て行って」

 サンジのこともよく分からんけど、ナミがこうしていつも通りになるのも分からん。なんだよ、さっきまですげェ眠そうだったのに。なんでこんな急に、目ェ覚めるんだ。おれじゃダメなのに。

「……んん」
「なに、ルフィ」
「おれが起こしても起きねェのに、なんでおまえ、サンジとかゾロだと起きるんだ」

 呑気に大きく伸びをしたナミに訊くと、あんたってやっぱりバカよね、と笑われた。なんでだ。
 ナミが考えていることが分からなくて首を傾げる。

「いーから出て行って、ご飯が待ってるでしょ」
「んん! そうだな、メシだ!」

 何でナミがおれが起こしにいってもなかなか起きなくて、他のやつだとすぐ起きるんだろう。相変わらず分からないし、ナミが笑った理由も聞けないままだったけど、ナミの手に背中を押されて、おれは部屋を出た。
 朝の日差しと、まだ少し冷たい潮風が頬を撫でる。広がる海が、今日もおれを冒険の世界を見せてくれる。

「腹減ったー!」

 冒険にうずうずして、思わず叫んだ。うるせェ、と食堂からサンジの声がして、おれは駆け出す。

「サンジー! メーシー!」
「朝からうるせェぞルフィ。ほら、メシだ」
「おお、ルフィ。おはよう」
「おぉ、おはよう! ウソップ」
「ルフィ、おまえ今まで何処いたんだ」
「んん? ナミんとこ」
「へえ、そうか。ナミさんとこか。どうりで姿が見えねェと……あァ!?」
「ぶっ! なにー!? お、お、おまえ……ナミんとこ、いたのか? 今まで…?」
「? あっぁ、そうだ」
「こんの!! クソゴム!!」
「うおっ!?」
「レディの寝顔を拝見するたァどういう了見だ!」
「なにすんだよ!」
「ナミさんを起こしにいっても部屋にさえ入れてもらえないのに、てめェこのクソゴム! さては! ノックもせずに勝手に入っただろ!」
「お、おまえら、そろそろやめろ! 暴れるならキッチンじゃなくて表に出ろ、な!?」

 ウソップが何か言ってるけど、おれはサンジからの蹴りをかわしながら話していたので、あまりよく聞こえなかった。手を振ってなんか焦ってるみてェだけど、別にメシに被害が及ぶようなことはしねェから、そんなに心配しなくてもいいのにな。
 煙草をくわえたサンジがおれを睨みつけて、また足を思い切り振ってくる。ぴょん、と跳ねてそれを避けると、サンジがイライラした様子でくるりと振り返った。
 なんでサンジが怒ってるのか、おれはよく分からん。

「なに言ってんだよ! おれは、ちゃんと、訊いてから入った、ぞ!」

 次々と飛んでくるサンジの蹴りを避けながら答えると、ぴたりとサンジの攻撃が止まった。
 後ろからガチャリとドアの開く音。戸惑ったようにナミの呼吸が少し乱れた。

「おはよう。…何してんの、あんた達?」
「おお、ナミ。起きたかー」
「お、おいナミ、早くこいつら止めてくれ! でないとおれがとばっちりを食う…」
「…ウソップ、あんた私の後ろに隠れるのやめなさいよ」
「おはようございます、ナミさん。今からコーヒーいれるんで、ちょっと待ってもらっていいですか?」
「ああ、いいわよ。たまには自分でやるわ。ありがと、サンジくん」

 ひらりと手を振って、ナミはキッチンの奥へ向かう。
 ナミがコーヒーの準備をしているのを見てから、サンジは小声で訊いてきた。

「おいルフィ」
「ん? なんだ?」
「ナミさんに訊いてから部屋に入って、おまえは何してたんだ?」
「ナミを起こしてた」
「寝顔は見たのか」
「んー。見えた気もするけど、よく覚えてねェ。布団かぶってたしな」
「…寝巻きは」
「だから、布団かぶってたから何も見てねェって」
「そうか。ならいい」
「? なんだ?」

 よく分からん。おれは首を傾げる。ウソップも首を傾げた。
 ふう、を煙草の煙を吐き出したサンジが、ナミに聞こえねェ小さな声で呟く。

「男として見られてねェから、部屋に入れてもらえたんだろうよ」

 んん? ますますよく分からん。男として見られてねェって、おれは男だぞ。
 難しい顔をしているおれを無視するように、サンジはメシの準備に戻る。
 腕を組んで考え込んでいるおれがウソップに助けを求めると、ウソップは困った顔でぼやいた。

「ルフィ、おまえ……男なんだよなあ」
「なんだウソップ。おれは男だぞ」
「ああ、わかってる。ナミは女なんだよ」
「当たり前だろ」
「女ってぇのは、あんまり寝顔とか無防備な顔を見られたくねぇ生き物なんだよ。ナミはおまえにはそれを許して、サンジにはそれを許していない」
「……おれが特別ってことなのか?」
「たぶんな。真意は分からねぇけどよ」
「しんい?」
「サンジが言ったように、おまえを男として見てないから部屋に入れたか、おまえを男として意識した上で部屋に入れたか…」
「……よく分からん。ナミに訊いてくる!」
「あ、お、おいバカ、やめろって!」

 ウソップの手を振り切って、おれはカップを持ってるナミのもとへ駆け寄った。

「なあ、ナミ」
「なに?」
「なんでおまえ、おれを部屋に入れたんだ?」
「……なんでって、あんた何が訊きたいの?」
「サンジはダメで、おれはいい。なんでだ? おれ、男だぞ」

 なあ、と問いかけると、ナミは一瞬ぎょっとした顔でおれをしげしげと見つめた。
 ねえ、あんた本当にルフィ? そんな風に疑わしげな視線が突き刺さる。おれは黙って波の瞳を見つめ返す。何を言えばいいのか分からなかったからだ。
 ふ、とナミはおれから視線を外して、ウソップを見やる。こちらの様子を窺っていたウソップがハッと顔を背けたのを見て、ナミは何を納得したのか、溜め息を零した。

「はぁ……。余計なこと吹き込んでくれちゃって」
「? 何の話だ?」
「ううん、いいわ。サンジくんと喧嘩してたのもそれね?」
「んん。よく分からんけど、たぶん」
「はいはい、大体の事情は分かったわ」
「おお、そうか! よかった!」
「何がいいのよ…」
「で、何でサンジはダメで、おれはいいんだ? おれだって、サンジと同じ男だぞ」
「男、ねえ」

 呟いて、ナミはしげしげとおれを眺めた。
 無遠慮な視線に晒されながら答えを待つ。ナミは呑気にその場でコーヒーを啜ると、ぽつりと小さな声を落とした。

「あんたはまだ、男の子だから。いつになったら、男になるの」
「……ナミ?」

 あんまり聞いたことのないような声音で、そんなことを言う。心臓が跳ねる呟きをカップの中に落とすと、ナミは顔を上げていつものように笑った。おれは、何も言えない。
 勝気に笑った瞳を見つめる。おれの視線にはそれ以上何も答えないまま、ナミはあっさり背を向けて、席へついてしまった。
 後にはただ、いつもより煩くなった心臓を抱えたおれが残される。

「…あのなー。……おれだって、男だぞ」

 サンジがダメで、おれが部屋に入ってもいい理由。ナミの真意の断定はできなかったけれど、おれだけが許されている理由に、ひどく都合のいい夢を見た。
 明日からナミを起こす時、どういう顔をしてどんな風に起こしてやろうかと考えて、騒がしい胸をそのままに、おれは朝食の並ぶテーブルへ向かった。

「お、おいルフィ。それでおまえ、ナミはなんて?」
「んん、ウソップ! 腹減ったー!」
「聞いてねェのかよ!?」
「いまチョッパーがゾロを呼びにいってるから、そしたらご飯よ」
「ゾロー! 早く来ーい!!」

 いつも通りの朝、いつもより少しだけ心臓が煩いおれは、空腹を叫んでそれを誤魔化した。

■END

ナミさんがサンジを部屋に入れないのは、サンジが男だと分かってるから。そしてナミさんは、彼に応える気がないから。(サンジが本気かどうかはこの際、問題ではない。)
ルフィを部屋に入れるのは、油断してるから。だと思う。
ナミさんはルフィを男の子だと『誤解』したままここまで来てしまっていて、ルフィは疎いけどそれなりに自分も『男だ』という自覚があって、ちぐはぐな認識を持つふたりの凸凹なやりとり。に、見えてるといいなあ。
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コメント
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メールありがとうございます。
初めまして哀華様。
るるるん管理人のあえなと申します。
メールありがとうございました。
とても嬉しかったです。
また作品について嬉しい感想をたくさん頂けてとても光栄です!
それと、自分のペースで更新を続けて下さいとの言葉掛けを頂けて本当に嬉しかったです。
来てくださる方のために、なるべく更新を怠らないでおこうという思いから、
心にあまり余裕が無かった私にとって、とても安心感を与えくれる一言でした。
これからは、自分のペースで皆様に楽しんで頂けるようなサイト作りを目指していきたいと思います。
それと、お友達さんと私のサイトについてお話しして頂けたようで(>_<)
とても嬉しかったです!
身近にルナミについて語れる方がいて羨ましいです(*^_^*)

哀華様の作品も拝見させて頂きました。
とても楽しく読ませて頂きました!
特に船長可愛いです!
鈍感さが本当に船長らしくて(*^_^*)
これからの哀華様のルナミ作品がとても楽しみです!
また遊びに来ます!

それと、質問についてですが、
もちろんOKです!
早速、リンク繋げますね(^ ^)

それでは、長々となってしまい、失礼しました。
これからもよろしくお願い致します。
あえな 2012/07/15(Sun)23:27:58 編集
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