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神山監督とタムラコータロー監督が好き。 I've Soundという音楽制作集団のぷち追っかけ。
■輪るピングドラム/晶馬×苹果、冠葉と陽毬など。
※短編集、ほぼログです。

輪るピングドラム 短編集


■03/01 ひと握りの残酷(陽毬→冠葉)
 わたしが欲しいものは永遠に手に入らない。だってもう手のひらに乗っている。繋がれた手は呪われた血のように、わたしの想いを鈍らせる。
 ねえ冠ちゃん、わたし、冠ちゃんのこと、お兄ちゃんって呼びたくないから名前で呼んでるんだよ。
END.

■03/10 砂の城(冠葉と晶馬と陽毬、そして苹果)
 見えない鎖で繋がれて、牢の中で城を象る。騎士と王子と姫君、三人だけの王国。これ以上守るものがないからわらう騎士、これ以上守るものを手に入れられないからわらう王子、これ以上守られる意味を見出せないからわらう姫君。ああ、罪に濡れた頬を拭う手はどこに、罰を受けた瞳を包む眼差しはどこに。

 永遠を手に入れるために救世主はわらう。運命を片手に、孤独に戦う。それだけが往く道だった。仮初めの夢と他者の願望を背負い、自らの心を潰して。運命を辿る救世主に、だったひとりだけ、無力な王子が問いかけるのだ。君は誰。救世主は運命の名を答えた。違う、君のことだよ。けれど王子は否定した。

 その名を答えれば、もう何も取り戻せなくなる。大事なものを永遠にするどころか、大事なものを永遠に手にすることができなくなる。故に救世主は王子に自らの名を答えることを許さなかった。君は君じゃないか。牢獄の中で砂の城を眺めているだけの無力な王子が、それでも救世主にそう言った。
END.
(できれば、もうちょっと書きたかった。王子=晶馬、救世主=苹果、騎士=冠葉、姫君=陽毬)

■04/01 ごめん、嘘
 夜の中、君が見せる戸惑いの瞳に僕は昂る感情を隠さない。
「しょ、晶馬くん…ほん、き?」
 君はどう思う、なんて言って腕を掴む。息を呑んだ君の額と自分の額を合わせて、僕はわらった。
「この状況で何もしないなんて、そんなわけないじゃないか」
 嘘つき。君の悲鳴は僕の唇に押し潰されて夜に消えた。
END.

■04/01 盗まれたもの
「私は桃果になるの」
 感情を押し殺した顔だった。嘘つきは泥棒の始まりっていうのなら、君は僕に最初から嘘をついていたわけで、僕が君の嘘を破ってしまった時、この心が盗まれたのは、君の言う運命、なのだろうか。なんて考えてしまう程度には、僕は君のことが。
「何よ」
「…何でもないよ」
 嘘つけよ。
END.

■04/30 (もう会えないって、知ってるよ)
 蠍の炎が消える。僕の腕の中の君を苦しめる罰が消える。これは君が受けるべき罰じゃない。だから。閉じられていた瞼が震える。見開かれた瞳に浮かぶ涙。たぶん、僕の名前を呼ぼうと唇が動く。でも、時間切れ。ありがとう、僕が愛した、たったひとりの女の子。(もう会えないって、知ってるよ)
END.

■04/30 (私だって、)
「ありがとう──愛してる」
 耳元に落ちた晶馬くんの声、が。私の胸を突く。
 私を燃やし尽くす炎が消えた瞬間の静かな告白に、ハッと顔を上げた。
 涙で滲んだ視界に映った晶馬くんの表情が、炎に飲まれて燃えていく。
 いやだ、いかないで。理解するよりも先に不安に手を伸ばした、のに。
(私だって、)
END.

■05/13 色付くりんご
「苹果」
 なんか、慣れないなあ。
 呼び捨てに特別な感情を抱く。今までずっと苗字で、さん付けで呼んでいたものだから。
 いいや、それだけではない。実際、彼女は晶馬にとって大事な人で、唯一の女の子なのだ。
 照れながら様子を窺ってみると、呼ばれた本人は、あれほど望んでたのに真っ赤になっていた。
「荻野目さん?」
 思わず首を傾げてみた。
 けれど、『苹果って呼んで!』と照れ隠しに怒り出すものだから、子どもっぽいなぁと頬が緩んで、少しだけ余裕が持てた。
 その名を冠した果実のように、気恥ずかしそうにしている苹果を眺める。
 そうして晶馬はへにゃりとした柔らかな声で、彼女が望んだその名を口にするのだ。
「はいはい、苹果」
END.
(16歳晶苹は『苹果』呼びだと思うのだけれど、転生晶苹は『苹果』さんだと思うの。どっちでも美味しい。)

■05/13 call my name.
 ベッドの中でも「荻野目さん」一線越えても「荻野目さん」いつまで経っても「荻野目さん」…もう、なんなのよ!
「いい加減に名前で呼んでよ!」
 思わず手が出ちゃったけど、仕方ないわよね。晶馬くんが悪いわ!
「な、なんだよ! なにも殴ることないだろ!」
「だって晶馬くんいつまでも私のこと名前で呼んでくれないから! 夜だっむぐ!」
「うわぁぁあやめてええぇぇ!」
END.

■05/13 てのひらに飴玉
「…ついてこないでよ」
 はあ、と熱っぽい文句を零して、苹果はじろりと晶馬を睨む。
 日記目当ての晶馬は、困ったような顔で足を止めた。
「でも君、具合悪そうだよ。この前みたいに倒れられても心配だし」
 心配。心配と来たものだ。苹果は疼いた胸の奥に眉を顰めた。
「平気だから、放っておいて」
 がらがらとした声で突き放せば、ぼそりと晶馬が何かを言う。聞こえない。
 苹果が煩わしそうにひと睨みすると、 晶馬は弱った様子で視線を落とした。
 具合が悪いのは事実だけれど、ただの風邪だ。きちんとご飯を食べてゆっくり眠れば、すぐに良くなる。
 苹果は現在、プロジェクトMに忙しいのだ。風邪なんて引いている場合ではない。
「今日は、ちゃんと家で寝なよ。体調悪いときに無理して行くのは、よくないよ」
 晶馬はまだ食い下がる。苹果が苛立たしそうに振り返ると、晶馬が手を突き出してきた。
「貰い物でわるいけどさ、よかったら、もらって」
 林檎の文字をパッケージに見付けて、子どもみたい、と思いながら、苹果はそれを受け取った。
(ヘンなひと)
END.

■05/13 「わらってよ。」
 ああ、どうしてだろう。僕達の妹は救われた。僕の大事な女の子も生きている。健康的に、ふたり仲良く、僕と冠葉の居ない、見慣れない家の台所に並んでいる。
 僕はそれを幸福な風景として捉えているのに。(捉えようとしている、のに)
「ねえ、陽毬ちゃん。なんだか、こうして台所に立つと、ヘンな感じしない?」
「ヘンな感じ?」
「── ううん、ごめん。なんでもない!」
 にこりとして、君は微笑む。その微笑みの奥に隠れされた気持ちが何なのか、僕には分かる。見え透いた笑顔。そんな風にわらってほしかったわけじゃない。僕のことなんて忘れてくれればよかった。そしたら君は、わらえていたのに。(本当に?)
「── しょうまくん」
 なかないで、荻野目さん。どうか。(ああ、君はもしかして、救われなかった、僕は君を救えなかった。君の笑顔が、とおい。)
END.

■05/15 あいされてる、ということ
「私は晶馬くんたちのこと、きらいになったりしない」
 荻野目さんの温もりが、僕の身体に沁みこんで来る。
 荻野目さんの気持ちが、僕のこころに沁みこんでいく。
 高倉家の罪を知り、その罰を目の当たりにして、巻き込まれただけの君は、それでも僕に手を伸ばすのか。
「……なかないで」
 濡れた声に、僕は胸が熱くなった。僕は嗚咽を飲み込むこともできず、みっともなく、荻野目さんの温もりに縋るように、背中に感じる柔らかさを噛み締めた。
 ああ、そうか。もう認めよう。僕は、君に。
END.

楽しかった!! 晶苹かわいい……。

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