忍者ブログ
神山監督とタムラコータロー監督が好き。 I've Soundという音楽制作集団のぷち追っかけ。
はぐれメタルほど、孤高には生きられまい。

ところで、あなたは『はぐれメタル』を知っているだろうか。国民的人気を誇るRPGの最高峰とまで言われた、ドラゴンクエストに登場する馴染みあるモンスターのうちの一匹である。
ぺちゃんこに潰れたメタルなボディを持ち、間の抜けた円らなおめめで、にんまりと微笑んでいる。なんとギラまで使えちゃう。そう、逃げ足の異様に速い彼のことだ。

はぐれメタルは孤高である。孤高と孤独の違いは大きい。
某辞書でひいてみると、省略している部分もあるが、以下のようにある。

【孤高】
俗世間から離れて、ひとり自分の志を守ること。また、そのさま。「―を持(じ)する」「―な(の)人」

【孤独】
仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと。また、そのさま。

私がなぜ彼等を孤独ではなく孤高だと思うのか、その理由は彼等を示すその名称にあるといえよう。
他にもメタル系のモンスターはいくつか存在する。例えば、分かりやすいところだと、メタルスライムやメタルキングだ。

まずメタルスライムだが、彼等もメタルなボディを持っているものの、ノーマルなスライムたちと同様の暮らしをしているのか、集団で現れることが多い。また、あるシリーズでは八匹揃うと合体する。つまり彼らは、それぞれが集団行動をとれる個体である。
また、メタル系の一族なかでは、もっとも経験値が低い。序盤にお目にかかれれば嬉しいのだが、中盤に差し掛かってくると、たかが1000の経験値、などと失笑が漏れてしまうこともしばしば。もちろん、たかが1000などと言って彼等を鼻で笑っては失礼極まりない。彼等も誇り高きメタル族の一員である。
一員ではあるが、メタル族の中では、比較的逃げ足が遅いといえよう。へらへらとした顔で左右にぷるぷると揺れて、たいして痛くもない突進をしてくる。寧ろ可愛いやつめ。たまに怒ってメラを唱えることもあるが、円らなおめめを見つめてしまうと10や15のダメージ、許せてしまうのだから不思議なものだ。
姿かたちも雑魚界隈のNo.1もとい、勇者さまご一行レベル上げ業界一のへこたれない心を持つモンスターであるスライムとそっくりである。『スライムは滅びぬ。何度でも蘇るさ』これはかつて、勇者たちに一瞬にして倒され地面にへばりつくスライム達を見た高名な大佐が残した名言である。そんなスライム達から羨望の眼差しを込められて、防御力の高い彼等はメタルスライムと呼ばれているのだ。
孤独ではないが、孤高でもない。それがメタルスライムである。

次に、メタルキング。こいつはまたすごい。何がすごいのかって言うと、あのでっぷりとしたメタルなボディを、これでもかというくらい主張する、ほっぺ(と思われる箇所)のテカり具合。まさにキングの名を冠するに相応しく、より偉大な雰囲気を醸し出す恰幅のよさで、メタル族を圧倒しているに違いない。当然、キングなので金ぴかの王冠をかぶっている。あの、にんまりとした、当然のような顔でだ。
さて、メタルキングはメタルスライムに比べると、集団で出現する率が低いように思う。あくまで私の経験による。ただ、メタルキングは恐ろしく足が速い。まじん斬りを選択し、ごくりと唾を飲んで見守る最初のターン。SFCのコントローラを握る手に汗が滲む瞬間である。どきどきしながら画面を見つめる。
えにくすのこうげき! そんな文字は、画面に躍らない。
期待も気概も希望も虚しく、誰にも負けない素早さを誇る彼等は、我々の攻撃など知ったことかと馬鹿にしたにやけ顔で、恥ずかしげもなく背を向け逃走するのだ。
まるでそれが当然、これが我等の道であると宣言するかのように、画面に表示される残酷な勝利宣言。
メタルキングは逃げ出した! 画面の前でくずおれ、涙を流して唇を噛んだ、その思い出があなたにもあるだろう。
彼等は王である。王は民に理解を求めるものだ。いくら彼等が好き勝手にあちこちの島や洞窟に出現しているように見えても、実は彼等は、そこにしか出現しない。王は領地を選んでいるのだ。民の為を思い、日々背を向けて高らかな不戦勝を叫んで逃げる。そして我々に尋常ならざる悔しさを教えるのだ。
やはりまた彼らも孤独ではない。なぜなら、彼等メタルはキングの名を冠するが故、王としての仕事として日々逃げ惑い、民に恥じぬよう、その恐るべき俊足に磨きをかけているからだ。
ついでに、彼等は王であるが、王が他にも存在することに異論はない。王族として君臨する彼等は優雅に、共に生きる他の王と日々大地をでっぷりと駆け抜けるのである。

さて、ここにきてようやく問題のはぐれメタルの話となる。彼等もまた、メタル系の一族に恥じぬ素早さ、防御力の持ち主である。
このはぐれメタル、前述したメタルスライムとメタルキングの姿とは一線を画している。彼等が孤高である理由はその名称であると冒頭で言ったにも関わらず、姿かたちから入るとは何事だ、との叱責は飲み込んでいただいて、もうすこし私の話しに付き合っていただきたい。
まず、彼等のボディは、メタルスライムともメタルキングとも、似ても似つかない。共通しているのは、あの憎らしいくらいくりくりとした円らなおめめと、にやりと馬鹿にしたように笑う口。そして煌く銀色の三点である。
潰れたボディはきらきらと煌いて、ゆらゆらとこちらを惑わせる。淀みなく揺れて、迷いなく光る。そんな彼等は、時として集団で現れるが、メタルスライムのように集団行動を可能としない。つまり、何匹集結しようとも、はぐれメタルははぐれメタル、合体はしない主義なのだ。
そんな自分を貫く彼等は、一匹でにやりと現れることもあれば、もう一匹、二匹を連れたってきたかのように、にやにやと現れることもある。
但し、彼等は大変に気紛れだ。メタルキングのように余裕ぶって留まることもあれば、他のモンスターなど知ったことかとにやりとした笑みを残して1ターン目で逃げ出すこともあり、数ターン居続けてギラやらなにやらで勇者をちくちくと攻撃してくることもある。
そんな彼等は、メタル族をあえて離れている流浪の民なのだろう。一見、メタルスライムやメタルキングと変わらぬ行動をとっているように見えるが、その実、彼等はなかなかに好き勝手な行動をしている。
メタルスライムのようにちまちまとしたサービスはせず、メタルキングほどの経験値も持たないのにあっさりと身を翻し、王の真似事をしてほくそ笑む日々。潰れたボディで、そうして気紛れに各地を旅しているに違いない。あの間抜けな顔で空を眺め、草木の中を這いまわり、悪戯するように勇者へちょっかいをかけ、飽きたら別の場所へ向かう。それが彼等なのだ。
自らを流浪の民と名乗ることで、自由を手に入れた彼等は、何者にも縛られることなく、自由気ままにのったりと空を見上げる日々を送る。そこに目的はないのかもしれない。或いは、メタル族の下には戻らないぞという意思を示すため、はぐれることが目的なのかもしれない。
きっと昔、メタルキングに逆らったメタルスライムが王に押し潰された際、なんの間違いか王の身体の一部と融合して、べっちゃりと地面に這い蹲るかたちで命拾いしたのだろう。当然、メタル族の下には戻れず、ひとり孤独の旅に出る。いつしか王の真似をするようになった彼は、自らを『はぐれメタル』と名乗り、王へのあてつけのように、勝手気ままな生活を送るようになったのだ。
そして今日(こんにち)に至る。自らを曲げることなく、王へ抗い、挑戦し続け、自分を曲げずに微笑み続けてきた者達。それが『はぐれメタル』だと、私はそう信じている。

■END

はぐれメタルほど孤高には生きられまい、と思って真面目に考えてみたら、3000文字も使ってしまった。

■追記 2012.01.10.
無意識にメタルキングをキングスライムと表記してしまう病。見直したつもりだったが無意識にメタルキングと読んでいたようだ。つまり修正しました。

拍手[1回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[TOP]  31  30  29  28  27  26  25  24  23  22  20 
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[05/09 mugi]
[07/15 あえな]
[07/02 桜井孝治]
[11/10 ana]
ブログ内検索